歯の黄ばみとホワイトニングについて

歯の黄ばみの原因を内側・外側の両面から整理し、ホワイトニングの科学的メカニズム(薬剤・光照射・マスキング効果)と副作用、維持ケアまでをわかりやすく解説します。

目次

歯の黄ばみで悩む方は多く、人前で笑うことをためらうなど心理面にも影響します。最近はホワイトニングへの関心が高まっていますが、仕組みや効果を正しく理解している人は多くありません。本レポートでは、黄ばみの原因・メカニズムと、ホワイトニング薬剤や光の役割を科学的に解説し、理解を深めることを目的とします。

1章:歯が黄ばむ原因と仕組み

1.1 歯の構造と元々の色

歯は透明〜半透明のエナメル質と、黄色みを帯びた象牙質で構成され、最終的な見た目の色は象牙質がエナメル質を通して透けることで決まります。象牙質の色やエナメル質の厚み・透明度、表面の凹凸、光の反射特性、そして遺伝が複合して個人差が生じます。

1.2 歯の内側が原因で変色するケース(内因性)

年齢による変化

加齢で象牙質は厚く色が濃くなり、同時にエナメル質は摩耗や酸蝕で薄くなります。結果として内部の黄色みが透け、40代以降で黄ばみが目立ちやすくなります。表面清掃では改善しにくく、ホワイトニングが有効です。

外傷(けが)

強い衝撃で歯内出血が起こると、血液由来色素が象牙質に沈着し、数週〜数か月後に灰色〜茶色に変色することがあります。

薬による着色(テトラサイクリン歯)

歯の形成時期(おおむね0〜12歳)にテトラサイクリン系抗生物質を多量摂取すると、灰色・茶色・縞状に内因性変色します。見た目だけでなく心理社会的影響が大きく、審美治療はQOL改善に寄与します。

歯科治療材料による変色

古いレジンは吸水や劣化で変色します。新しい材料への置換で改善可能です。

病気による変色

全身疾患や歯髄壊死など歯の病気が内因性変色を引き起こすことがあります。専門的診断が必要です。

脱灰(ミネラル喪失)による見え方の変化

エナメル質の脱灰で微細な凹凸・結晶不整が生じると光が乱反射し、ツヤ消失・黄ばみ強調が起きます。初期は唾液などで再石灰化が期待できます。

1.3 歯の外側が原因で着色するケース(外因性)

飲食物と嗜好品

コーヒーや茶に含まれるタンニン、赤ワインのポリフェノール、カレーのターメリック、トマトソース・醤油などの濃色調味、ベリー類、チョコ、タバコのタールなどが代表的な着色源です。白ワインや炭酸飲料等の酸は歯面を軟化させ、他色素の沈着を助長します。

ステイン形成の仕組み

歯面は唾液タンパクでできたペリクルで覆われ、ここに色素が沈着→歯組織へ拡散→組織と結合して固定、の段階を経て頑固なステインになります。

口腔衛生と唾液の影響

表面の微小傷やプラーク・歯石は付着基盤になります。唾液の自浄作用が弱い(分泌低下)と着色しやすく、適切なブラッシングと定期検診が予防に有効です。

表1:内因性/外因性の原因比較

要因の種類原因メカニズム特徴
内因性象牙質の色(遺伝)象牙質の色がエナメル越しに透過生来の色/清掃では改善困難
加齢象牙質濃化+エナメル薄化40代以降に増加/ホワイトニング適応
外傷歯内出血→色素沈着灰〜茶色/発現は数週〜数か月後
薬(テトラサイクリン)形成期の沈着灰・茶・縞/心理影響大
脱灰結晶不整で乱反射ツヤ低下/初期は再石灰化可
治療材料(レジン)吸水・劣化で変色材料置換で改善
病気全身・歯髄疾患診断と専門治療が必要
外因性飲食物ペリクルへの色素付着清掃・クリーニングで改善
タバコのヤニタール付着非常に頑固
衛生状態プラーク/歯石/粗い表面付着促進/定期ケアで改善
唾液量自浄低下分泌改善で予防

2章:ホワイトニングで歯が白くなる仕組み

2.1 基本原理:酸化反応で色素を分解

過酸化水素/過酸化カルバミドが分解して活性酸素(フリーラジカル)を生成し、色素分子の発色団(共役二重結合・芳香環)を酸化切断。外側だけでなく内部の着色にも作用する漂白メカニズムです。

2.2 主な薬剤と特徴

過酸化水素(HP)

反応が速く即効性。オフィスホワイトニングで使用。高濃度では粘膜刺激があるため歯肉保護など専門管理が必須。

過酸化カルバミド(CP)

約8時間かけてHPを徐放し持続性。ホームホワイトニングの主剤で、知覚過敏リスクが比較的低いとされます。

無髄歯への対応:過ホウ酸ナトリウム

神経のない歯の内因性変色には過ホウ酸ナトリウム等を選択。専門診断が前提です。

表2:過酸化水素と過酸化カルバミドの比較

側面過酸化水素ゲル過酸化カルバミドゲル
化学組成有効成分は過酸化水素尿素+過酸化水素の複合体
美白能力短時間で明確な効果緩徐だが自然で持続
速度1〜3回で到達しやすい7〜14日など継続使用
安全性高濃度は粘膜刺激リスク知覚過敏リスクは比較的低い
一般濃度6〜35%10〜44%
主な使い方オフィスでの塗布+保護トレーでの在宅使用

2.3 光照射(LED/レーザー)の役割

光自体が漂白するのではなく、薬剤分解を促進して活性酸素生成を加速する触媒的効果で、均一浸透と時短に寄与します。

2.4 漂白以外の効果:マスキング

薬剤によりエナメル表層の微構造が変化し乱反射が増加。内部の象牙質色が透けにくくなり、見かけの白さが向上します。

3章:ホワイトニングの効果と気をつけること

3.1 効果に影響する要因

着色タイプ(外因性・内因性)、薬剤濃度、作用時間、歯質(エナメル厚・透明度・象牙質色)で反応性は大きく変わります。表面ステインは反応しやすい一方、テトラサイクリン歯など深在性は難度が高く、専門診断で現実的なゴール設定が必要です。

3.2 起こりうる副作用と対処

知覚過敏

過酸化物が象牙細管を介して神経を一時刺激し、冷温痛が出ることがあります。多くは数日で軽快。症状時は濃度調整・間隔延長・知覚過敏抑制剤などを検討。

歯肉刺激

高濃度薬剤の歯肉接触で一過性炎症が起こることがあります。オフィスでは歯肉保護、ホームではトレー適合を確認します。

3.3 白さを保つためのケア

  • 濃色・酸性飲食(コーヒー/茶/赤ワイン/カレー等)は頻度・タイミングに配慮し、摂取後は水うがい・早めの歯磨き。
  • 喫煙は強い着色源。禁煙が最善。
  • 定期的な専門クリーニング(PMTC・エアフロー等)でステイン・歯石を除去。

結論

黄ばみは内因・外因が絡む複合現象。ホワイトニングは過酸化物の酸化反応と表層マスキング効果で白さをもたらし、見た目だけでなくQOLの改善にも寄与します。副作用管理や薬剤選択には専門知識が不可欠で、セルフ製品では同等の漂白効果は得られません。正確な診断のもとで最適かつ安全な計画を立て、ケアを継続することで、理想の白さを長く保てます。

この記事は歯科医師の監修を受けています。

歯科医師:岡本 恵衣

どこでもホワイトニング専属歯科医師 岡本恵衣

【経歴】
2012年:松本歯科大学歯学部 卒業
2013年:医療法人スワン会 スワン歯科で研修
2014年:医療法人恵翔会 なかやま歯科に勤務
2018年:ホワイトニングバー(株式会社ピベルダ)専属歯科医師
2024年:K Dental Clinic 開業
2025年:どこでもホワイトニング(株式会社ピベルダ)専属歯科医師

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